吉祥寺で暮らして働くマーケッターの、本と映画と仕事の日記
君は君のままでいい
三浦展の「下流社会」は非常に示唆に富む本であった。
三浦氏は、調査・シンクタンク業界の人間らしく、あの本は、データの読み込みが中心になっている。あの本は同業の私の目から見て、非常に優れたレポートだったと思う。

数値の読み取りには、公正さが必要だ。正しくあろうとしても、頭が悪いとつい間違った読み取り方をしてしまうこともある。頭が良くても、先入観や偏見を持って、自分の持つ主張的結論に無理クリ導いてしまう場合もある。
その辺、さすがは三浦さんは、アクロス→三菱総合研究所という、業界の王道的会社にお勤めだった経歴もあり、あのデータ分析はまさにマットウなものだったと、私からみても、太鼓判を押せる。よくできた報告書であった。(ただあの本でも提案部分がショボイのは、こりゃもー、われわれの世界の誰がやっても同じことである。みんな分析で力尽きちゃうので、あとはクリエイティブさんにおまかせがいい、はっきりいって。)

たまに「サンプル数が少ない」という批判の声も聞こえてくるが、確かにブレイクダウンしていくと、n=20とか出てきてますからね、それで結論づけるのは、心許ないと思う人は多いかもしれないけれども、私の経験から言って、ぶっちゃけ、大まかな傾向を知るのであれば、あのサンプル数でも十分だと言える。(ホントは各属性でn=30は欲しいが)

とにかく、あのデータそのものの信頼性もかなりアテになるものであるし、三浦氏の分析には妙な偏りもなかったと断言できる。
つまりあの本で結論的に言っていることは、統計的に真実であると、断言してもいいと私は思っている。

あの本にはいろんな示唆に富むデータ的傾向が現れているのだけれども、いちばんおもしろいのは(またいちばん紙面が割かれているのは)「上流」と「下流」を分ける要素は何かということだ。

読んだのは結構前なんで、アバウトになるけど、印象に残っている点を羅列すると、

(1)「上流/下流」を分ける一番の差は「モチベーションの差」だ。
とか
(2)「下流」の特徴は「自分らしい生き方」にこだわることだ。
とか。

意識でかなり鮮明な差として現れたのだが、よく考えるとそりゃそーだろうというものばかり。それが統計的真実というものであります。

「モチベーション」の差が、将来的な貧富を決める。これは現時点でフリーターであろうが、会社員であろうが、金持ちの子だろうが一人暮らしだろうが、あまり関係はない。厳密には多分ある程度の相関はあるだろうが、最大関与要素はあくまでも当人の「モチベーション」。
「こうなりたい」「こうなってやるぜ」みたいなこと。昔吉田栄作が「ビッグになりたい」とか言ってバカにされたことがありますが、やっぱりそういうことはバカにするもんじゃない。吉田栄作はともかく(まだ彼の人生は終わっていないので結論は出てないし、そもそも主演ドラマが何本もあったということで既にある程度以上はビッグになっていたと言える)、似たようなことを言っている矢沢永吉は、ちゃんとビッグに成り上がったと言っても差し支えないはずだ。
単純に「気持ち」や「動機」のないところに「成果」は生まれない。偶然の事故のようなことは当然起こるが、事故というのは99%の確率で、マイナスな方向に働くものだ。(宝くじに当たるとか以外)やる気のない人が何かをつかむことはあり得ない。そのやる気を人前に出すかどうかは別として。

また下流に分類される場合、一番特徴的な思考パターンが「自分らしさ」「個性」に対するこだわり。
「自分らしい」が一番ってのは、それ、単に「努力放棄しても大丈夫」みたいな発想にもんのすげー安易に直結しそうだし。
「自分らしさ」を目標にすると、ただ現時点で足踏みだけをすればいいだけになる。前進も上昇もない。停滞こそが目標ということになる。つまり、現時点から「別の何かになりたい」、あるいは現在持っているものと「別の何かをつかみたい」というモチベーションが生まれない。

つまり(1)(2)に共通することとして、「野心のないヤツぁダメだ」ってことが言える。もっと自分を否定して、もっと高みを目指せよとか、言っても、「自分らしく生きることが大事だ」とか言い訳ぶっこいてラクしてるようじゃ、いつまでも現状で停滞し、相対的には後退していくだけだということだ。


人をイイ気持ちにさせる言葉を煮詰めていくと結局は
「今の君は、そのままでいいんだ」
ということらしい。それがアムリタ。
これを言われるとそりゃーもうウットリ、甘い気持ちになりますよね、あー自分のままでいいんだ、自分のままで受け入れてくれるんだ、なんて安らかな気持ち〜と赤ん坊のようになってしまう。そして能力が赤ん坊のように退化してしまう。
当然、こんなことを言うのは、相手をスポイルしてしまうことになる。甘やかしてダメにするってことね。

やっぱね、
今の君は、そのままじゃダメなんだ」
と言ってくれる人がホントはイイヒトだよね。
少なくとも真剣に向き合ってくれる人だ。

テーマ:今日のつぶやき。 - ジャンル:日記